面会制限中のご家族とのかけはしに

フィッシュ!

緩和ケア病棟に面会に来られたご家族の印象に残っているエピソードを紹介します。

症状の進行により日中も寝ている時間が長くなってきた患者様がいらっしゃいました。
毎日ご家族が面会に来られるのですが、いつも寝ていてお話しができないとご家族から看護師に相談がありました。
患者様が覚醒していることの多い時間帯を伝えると、後日ご家族はタイミングを見計らい、面会に来られました。
しかし、その日も目を閉じて休んでいらっしゃいました。

ご家族は患者様の顔をじっと見つめた後、もう帰りますと言いました。
そして「この時間は起きているかなと思ってきたけれど・・・タイミングが悪かったみたいですね。気持ちよさそうに寝ているから起こすのも悪いし今日は帰ります。」と悲しそうな表情で話しました。

ご家族は一目でも覚醒している時の患者様の顔を見て、少しでもお話しをできることを期待して足を運んで下さったのだと思うと、大変心苦しい気持ちになりました。
ご家族の話を傾聴し、もし患者様が起きていたらどのようなことをしてあげたいと思ったのですかと尋ねると、「娘と孫が書いた手紙と私が書いた便箋を読んであげようと思っていました」と言われました。
「もし良ければ覚醒している時に私がお手紙を読んでもいいですか」と尋ねると、ご家族は頷かれました。
患者様が覚醒時に預かったお手紙を読んで差し上げると、患者様は震える手を合掌し「娘が来てたんやね。手紙ありがとう。」と言いました。
そして見える場所に手紙を置くと、読み返すことはありませんが手紙を眺めるようになりました。
後日、ご家族に上記の様子を伝えると、ご家族はうっすらと涙を浮かべて「ありがとうございます」と言われました。

ご家族は面会時に患者様が目を閉じて休んでいたり話しができない状況が続くと、なんとも言えない気持ちになると思います。
しかし、ご家族をはじめ大切な方が傍にいる時間は患者様にとって心強く、安心感があり、癒されるひと時だと思います。
もし患者様が起きている時は手足や肩などを優しくマッサージするのもいいかもしれません。

言葉でのコミュニケーションは難しいかもしれませんが、傍にいる感覚や肌に触れた時のぬくもりもコミュニケーションの1つではないでしょうか。
そして、患者様にとって何よりの緩和ケアだと思います。

限られた時間内での面会ですが、ぜひ患者様とご家族をはじめ大切な方にとって穏やかなひと時を過ごすことができるよう、これからもご家族とのかけはしとして支えていきたいと思います。

 

(写真は面会の場にもなる緩和ケア病棟のラウンジの風景)

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