人間は「生老病死」という宿命から免れることができません。
いずれは、配偶者、子供、両親、兄弟姉妹など、生きる時間を共有してきた大事な人を失って「愛別離苦」を体験することになります。
そして、知らず知らずに亡くなった人を思い慕う感情・情緒に心が占有され、一方では死別という現実に対応してこの窮地をなんとかしようと努力するようになります。
この共存する二つの間で揺れ動き、心も体も不安定な状態となり、これを「グリーフ」と言います。
グリーフの時期には「自分とは何か」「死とは…」「死者とは…」など実存への問いかけをも行っています。
このような状態にある人に、さりげなく寄り添い、援助することを「グリーフケア」と言います。
今回、「グリーフケア」の一環である第6回「すずらんのつどい」が開催されました。
ご遺族とスタッフが故人を偲んで、当時の想い、逝去してからの家族の様子や現在のお気持ち、病院への要望などを話して頂きました。
ご遺族の中には、「今だにぽっかり穴が開いたようで、何も手につかないことがある」と言われる方。
「十分なことはしてきたので、今は故人を懐かしく思い出します」と言われる方。
「新しい家族ができます」と報告してくれた人もいました。
まだまだ、立ち止まったままのご遺族、新しく未来に歩みだしたご遺族がいることに、グリーフケアは時間だけでは解決できない問題であることを感じました。
また、悲しみの表現には個人差があり、流した涙と悲しみの深さは比例しないことも分かりました。
今後私たちにできることは、患者のケアは勿論のこと、家族のグリーフからの回復をもたらす力(レジリアンス)となれるよう、家族への関わりを持つ重要性を考える一日となりました。
すずらんの花言葉は『幸福の再来』。
ご遺族が一歩前に踏み出し、再び幸福が訪れることを緩和ケア病棟スタッフ一同心から祈っています。
ホスピス緩和ケア病棟看護師D
(写真は、「千の風になって」をテノールで熱唱される院長先生)