緩和ケア日記 『食べるってどういうこと?』
ホスピス緩和ケア病棟に入院されている患者様のなかには、食べることが難しくなってくることがあります。
その人にとって「食べることとは?」ということをよく考えます。
食べることの意味は人それぞれです。
栄養をつけて元気になる、家族様と楽しい時間を過ごす、旬なものを食べて季節を感じる、味を、匂いを、見た目を楽しむなど、「食べる」のそのひと単語に一人ひとりそれぞれの意味があると思っています。
そのため、その人の食べる意味に合わせたケアを行っています。
食養科では、食事を通して患者様に満足してもらえるように、お正月・七夕・クリスマスなど季節の行事に合わせてメニューを用意しています。
入院生活において食事が楽しみな時間のひとつになるように、心をこめて作っています。
病棟では、栄養をつけて元気になりたい患者様には、食養科に相談し食事内容を検討します。
家族様との時間を大切にするために、コロナウイルスが蔓延する以前はラウンジで家族様と一緒に食事を楽しんだり、家族様がラウンジで調理をしてその匂いを感じる機会を設けたりしていました。
私が関わらせていただき、印象に残っていることがあります。
バレンタインの日にご家族様がチョコレートをペースト状にし、ご家族様と一緒に口元に運ぶと患者様は意識が薄らいでいるなか口を動かす仕草がありました。
その様子をご家族様は「今、舐めたね」と喜び、その姿をビデオに納められていました。
また他の患者様では、胃のチューブからビールを入れるとお腹から上がってくる匂いを楽しまれ満足そうな表情をして「美味い」とおっしゃっていました。
食べることがひとり一人違うように、好みも考えかたもそれぞれに違います。
穏やかに過ごせるように、一人ひとりの患者様に合わせたケアを今後もできるように心がけていきます。