ホスピス緩和ケア病棟の師長さんから聞いたエピソードを紹介します。
ある患者様は、自分に何かあった時に伝えたい大切なことを記載する「もしもノート」を記入しておられました。
このことを看護師に伝え、看護師にも「もしもノート」を下さいました。
http://www.npolec.org/note/note.html
しだいに症状コントロールが難しくなり、お薬を使って半分眠った状態にすると辛い症状が楽になることを、患者様は医師から聞いていました。
しかし、その方法を選択する時は自分の意思を伝える事ができなくなることも理解されていました。
患者様がその方法を選択しようと決意された時、それまで鉛筆で記載されていた「もしもノート」を清書しようと、ご家族に使い慣れている万年筆のインクを買ってくるように伝えたそうです。
そして思いの丈をすべて「もしもノート」に記載し、「私の仕事はすべて終わりました」と医師に投薬の実施を依頼されました。
患者様が亡くなられた後、ご家族がご挨拶に来て下さいました。
その時に、患者様がもしもノートに「緩和ケアの発展のために利用してほしい」と病院に寄付をするよう書いてあったことを教えていただいたそうです。
このエピソードを聞いて、最期まで自分で意思決定された患者様とそれを支えたご家族、緩和ケア病棟のスタッフはすごいと思いました。
ホスピス緩和ケア病棟の目標である、「その人らしく生きられる」ことを支えることができたケースでした。