『口から食べたい』という願いに寄り添って  緩和ケア日記

あったかい看護

緩和ケア病棟では、リハビリテーションを希望された方や必要と判断された方にリハビリを提供しています。
主に理学療法士か作業療法士がリハビリをしますが、嚥下機能が低下した方は言語聴覚士が介入しています。

終末期を迎える中、食事は誤嚥性肺炎などのリスクは高くなりますが、食事を楽しみたいという方もよくいらっしゃいます。
その人に合わせて嚥下機能の評価を実施し、食事を安全に少しでも楽しめる形を選択しています。

今回、癌の影響で脊髄性の麻痺と嚥下機能が低下し食事がとれなくなって経管栄養となっていたA様について紹介します。

A様は入院された時から「食事を楽しみ程度でもいいから食べたい」と希望があり、入院当初から理学療法士と言語聴覚士のリハビリを開始しました。
嚥下評価を実施し、ソフト食(ゼリー状)から少し食事を開始することになりました。
医師、言語聴覚士が経過観察をしながら本人の希望に応じて食事の形態を少しずつ固形に変更していきました。
食事の時には車椅子に座り、安全な姿勢で食べられるよう理学療法士が介入し、言語聴覚士と連携を取りながら食事を進めていきました。
毎度の食事時には看護師さんの介助で車椅子へ移乗しており、首や体幹も徐々に筋力がついてしっかりとしてくることで最終的には3食とも口からの食事摂取が可能となりました。

緩和ケア病棟に入院された方で、嚥下機能が低下し絶食状態で緩和ケア病棟へ入院され、A様のように完全に食事を再開できる方は多くはありません。
もちろん症状にもよりますが、今回の場合はご本人が言語聴覚士の説明やリスクを理解し、無理することなく少しずつ進められたことと、何よりも食べたいという気持ちを強く私たちに伝えてくれたことで医師、看護師、ご家族、リハビリスタッフなどが一丸となり進めることができたから経口摂取が可能になったのだと思います。

諦めていた食事を緩和ケア病棟に入院して、食べることができるようになり入院生活での日々の楽しみが生まれ、リハビリの目的の1つであるQOL(生活の質)の向上に繋がったと思います。

これからも患者さんの希望や訴えなどにしっかりと耳を傾け、緩和ケア病棟のケアの1つにリハビリが介入できればと思います。

(写真は緩和ケア病棟担当のセラピストです)

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