癌のターミナルで入院されたAさん。その当時は緩和ケア病棟が満床であったため4病棟に入院されました。
入院後、短期間で状態が悪化し、ご家族は気持ちが追いつかない様子でした。
最期の時間か近づいていると感じたBナースは、普段4病棟では実施しない「看取り期」の聞き取りを行いました。
他にもオペ患者様や重症患者様を受け持っていましたが、Aさんご家族としっかり向き合いながら30分以上かけて希望を聞き取りました。
翌日、緩和ケア病棟への転棟が決まりましたが、残念ながら転棟する前日の夜にAさんは亡くなってしまいました。
その時の夜勤だったCナースは、ご家族が湯灌(死後の入浴ケア)を希望していることを把握しており、朝一番に緩和病棟に浴室を借りたいと交渉してくれていました。
実はBナースCナースも数カ月間『緩和ケア病棟の支援』というかたちで働いた時期があり、その経験を活かしてより良いケアを提供するために行動してくれたのです。
緩和ケア病棟の浴室使用を快く承諾して下さったおかげで、すぐに家族と共に入浴ケアに入ることができました。
私は緩和ケア病棟の浴室を初めて使用するので、ご家族の前でもたつかないか内心ハラハラしていました。
また、死後の方の入浴介助、それも家族と共に行うなんて、どのような声かけをすればよいのかと戸惑うばかりでした。
しかし、Aさんを浴室に搬入した途端、緩和ケア病棟ナース2名が手を貸してくれました。
緩和ケア病棟の浴室はベッドごと搬入でき、とても広々としています。
ご遺体が傷まないように『冷水』で身体を洗い、ご家族には洗髪や洗顔を行ってもらいます。
緩和ケア病棟の方が率先してケアを行ってくださり、そのスムーズで丁寧なケアを見ていたご家族は「こんなに良くしてくれるんですね」と涙ぐみながら喜ばれていました。
今回、忙しい時間帯からケアを手伝って下さった緩和ケア病棟のスタッフさん、また私に手伝うようにと指示して下さった師長さん、主任さん本当にありがとうございました。
どこも人手不足で大変な中でも、他病棟に支援に赴いた経験がこのように活かされ、他病棟と協力して患者・家族の希望に添ったケアを実施できたことは本当に素敵なことだと思いました。